展示作品
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このピアノは、スタインウェイ&サンズ社が1898(明治31)年に9万台目の製造を記念し、当時アメリカ合衆国の資本家であった、ジェイソン・ジェイ・グールド(1836-1892)氏のために特別に制作したアート・ピアノです。
深緑と金彩を基調としたロココ様式の装飾が施され、ピアノの側面や天板には天上の人々が描かれています。鍵盤の左右には天使(天童ケルビム)の彫刻が施されています。
グールド家に20年余り置かれていたこのアート・ピアノも、グールド家の衰退によって、オークションに出されます。そのオークションで落札したのが当時パンアメリカン航空(1927-1991)の創始者でもあったホイットニー氏です。連日のように開かれたサロン・コンサートでは、ラフマニノフ、ルービンシュタイン、ホロビッツといった20世紀を代表する音楽家がピアノを演奏し来賓を魅了しました。
それを目の当たりにした、第26代アメリカ合衆国大統領 セオドア・ルーズベルト(1858-1919)が、スタインウェイに同じものを制作するように依頼、10万台目のアート・ピアノとして発注し、ホワイトハウスに置かれました。それは現在、スミソニアン博物館に「ホワイトハウスピアノ」として収められています。
しかし、大恐慌を迎えた頃には、ホイットニー氏もピアノを手放し、ある収集家の手にわたりますが、楽器としてではなく、美術品として35年余り人目に触れることはありませんでした。
その後のアート・ピアノは、アメリカから日本に渡り、高級フレンチレストラン・シェ松尾・青山サロンに展示され、ディナーコンサートでは、アシュケナージやブーニンによって演奏され、楽器として息を吹き返しました。
現在は、当美術館に展示されていますが、美術品としての展示だけではなく、楽器としての素晴らしさを知っていただくための演奏会を企画・開催する予定です。
1853年にドイツ人移民のヘンリー・エンゲルハート・スタインウェイにより、マンハッタンのヴォリックストリートに設立されました。その後30年間以上にわたり、ヘンリーと息子たちはモダンなピアノを開発。以来、彼らは、熟練の職人から弟子へ、世代から世代へと受け継がれる技術を駆使して、1台ずつ制作してきたのです。スタインウェイは、プロのアーティストの98%によって選ばれるピアノとなりました。現在もアーティストは報酬を受けることなく、スタインウェイを推奨しています。